コトラーのマーケティング概念(1.0~4.0+5.0?の定義)で学ぶ、変化・変遷

この記事は9分で読めます

スポンサード リンク




マーケティングの変化・変遷
Pocket

こんにちは、隣雲(りんも)です。

私は「マーケティング」が好きなのですが、最近はその捉えどころの難しさが逆に奥深さを感じる魅力なのかなと思い始めています。笑

 

過去記事でも、この「マーケティング」を意味する領域を最初に取り上げています。

「マーケティング」の定義は立ち位置によって広くなり記事はこちら)、世の中には「〇〇・マーケティング」も多く記事はこちら)、かなり混沌とした様子が伺えます。

・・・それらに加えてお伝えしたいのは、「マーケティング概念(コンセプト)」は時間軸によっても変容していくんですよね。

 

更新され続ける「マーケティング概念(コンセプト)」とは

経済の成長に伴い、「買い手側(顧客)」は常に変容していきます。

・・・としたら、もちろん「売り手側(マーケティング)」も同じ心持ちで良いはずがありませんよね。

 

それまで、「セリング」の一部だった「マーケティング」を体系的に編纂し、その功績から「マーケティングの父」と評されるフィリップ・コトラーという方がいます。

コトラーは、常にこの「買い手側(顧客)」の変容を注視しています。

P.コトラー

P.コトラー(出典:公式サイト

そして、「買い手」の変容に対応する「売り手の概念」としてコトラーは「マーケティング・コンセプト(定義)」を更新し続けています

 

・・・百聞は一見に如かずと言いますので、下記に「マーケティング1.0~3.0」を時系列に並べた図を作成しました。

先ずはこちらをご覧ください。

コトラーの「マーケティング1.0~3.0」

コトラーの「マーケティング1.0~3.0」(※クリックで拡大)

左側の年代が進むにつれて、真ん中の欄で市場が成熟していく過程を示しています。

右側でそれに対応した「マーケティング概念」が追随していくイメージですね。

 

日本では戦後復興から未曽有の経済成長を遂げましたが、かつては現在のようにモノに囲まれて消費体験も豊富というわけではありませんでした

言われてみると、当たり前なんですが、ついつい忘れがちな事でもあります。

 

この図が示唆していることは、色々とあります。

経済の成長に伴い、新しいモノや類似商品が次々に発売されて消費されていく。そして生活者の賃金も高くなり、様々な消費体験が繰り返されて生活が豊かになっていく・・・という図でもありますね。

 

コトラーは日本で2010年に書籍「マーケティング3.0」を発表して、この「マーケティング1.0~3.0」までを包括的に説明しています。

 

「コトラーのマーケティング3.0」朝日新聞出版

私の手元にあるこの本の帯には「消費者志向(2.0)はもう古い!」と、出版社がつけた販促コピーが書いてありました。なかなか煽りますね。笑

 

さて、この販促コピーではありませんが、「昔は良かった」的な経営者のボヤキは、概ね「マーケティング2.0」未満を指していると言われます。過去の成功体験も含めて俯瞰するような視点は持っておきたいものですね。

この章では「マーケティング1.0~3.0」までを説明します。

 

スポンサード リンク

 

「マーケティング1.0」・・・大量生産・大量消費(モノ不足)

戦後間もなくの日本がそうであったように、需要に対して圧倒的に供給が少なかったので、「製品志向」であればマーケティングになっていた時代を指します。

企業内の技術を「シーズ(種)」と言いますが、「技術に基づいた製品を作って売る」で完結していました。

供給が少ない「モノ不足」の時代なので、とにかく大量生産で需要に対応する図式です。

マーケティング1.0(製品志向)

コトラーは1970年代頃までの、「マーケティング1.0」を『製品志向』で『製品販売を目的とする製品管理』と位置づけました。

 

製品の規格化と規模の拡大で「大量生産・大量販売」戦略を象徴するのは、何といっても人類初の大衆車「T型フォード」の展開でしょう。

その創設者のヘンリー・フォードの放言を、コトラーはこの時代を象徴していると著書で紹介しています。

「フォードはこう言い放った。
『顧客は好みの色の車を買うことができる。好みの色が黒である限りは』
マーケティング1.0、すなわち製品中心の段階だったのである。」

出典:「コトラーのマーケティング3.0」朝日新聞出版

ヘンリー・フォードがジョークで言ったのかは分かりませんが、圧倒的に「供給側が強い力関係」にある時代だったことが伝わりますよね。

 

しかし、この需要と供給の力関係は、時代を経て需要側に力が移っていきます

日本の経済環境は、おおよそ1960年代から高度成長期 / 1970年代ごろには安定成長期に入りました。そしてこの頃は、市場は豊かになって、徐々に製品志向では売れなくなっていく時代になっていきます。

 

「マーケティング1.0」は製品志向のため、「職人的」「自己満足的」な性質を持ち合わせています。

そして、「売れなないのなら売ってやろう」と、優れた営業部隊を育成して販売攻勢をかけたのもこの時代となります。(逆に言うとそれで何とかなったとも言えなくもありませんね。)

その後、市場のニーズを汲む「顧客志向」の考え方が生まれてきます。

 

「マーケティング2.0」・・・顧客に欲しがられる戦略(モノ余り)

1980年代に入ると、「大量生産・大量消費」で進めてきた供給側に、ダブつきが見られるようになります。

模倣や追随する商品も多くなり、需要側である消費者側にとってみたら、消費選択の幅が増えたことを意味しました。

劣勢に立ちつつあった供給側が、「マーケティング」をセリングの一部の戦術ではなく、「戦略」に昇華する必要を認識したのでしょう。

 

この時期に「製品志向」であったマーケティング1.0が、「顧客志向」のマーケティング2.0へ進化していきます。

そして、コトラーは1980年代以降の、「マーケティング2.0」を『顧客志向』で『戦略的に顧客満足を探る/顧客管理』と位置づけました。

マーケティング2.0(顧客志向)

高次なマーケティング戦略として、「STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)」といった概念が導入されたのもこの時代です。

日本では1980年代のバブル経済を頂点として、消費の過渡期となった時代でもありました。

 

マーケティング従事の先人たちは、どのようにしたら商品を買ってもらえるかという悩みに腐心します。

その結果、顧客の欲しているモノを調べて、顧客のやりたい「コト」を提案する動きも加わってきました

総花的な「大量生産・大量消費」の考え方が、徐々に通用し難くなった時代には、「誰に・何を」と明確に働きかける「顧客管理」の戦略として前述の「STP」などが有効に作用したそうです。

 

そして、供給が追い付いた「モノ余り」消費の特徴として、「人と同じモノ」を嫌がる心理も大きく働くようになります。

・・・「自分らしさ」を求める顧客に、「あなたの欲しいものはコレ!」と先回りする必要性が出てきたわけですね。

この辺りから、市場や顧客の変化についていけなかった人は、「自分中心」の心持ちから抜けられなかった?のかもしれません。

マーケティング2.0から抜け出せない人

モノが充足して「モノ離れ」が顕在化したのは、1990年代初めのバブル崩壊を受けてからでしょう。市場はさらに成熟して、更に高次な欲求が見られてきます。

欲しい「モノ」や、やりたい「コト」を一通り経験すると、「精神的な充足」を価値として見出してきたのです。

 

「マーケティング3.0」・・・精神的な充足の付加価値(モノ離れ)

それまでは、顧客に「何が欲しいですか?」といったアンケートなどで、ある程度のニーズ(欲求)が把握できました。

しかし「マーケティング2.0」の途中から、「顧客自身が答えを待っている」潜在的な状況に変わってきたと言えるかもしれません

そのような背景を受けて、「マーケティング3.0」の時代では、顧客の「欲しいモノ・やりたいコト」が満たされた後の更なる高次な欲求に答える必要が出てきました。

 

マーケティング3.0(より良い社会)

そして、コトラーは2000年代以降の、「マーケティング3.0」を『精神充足志向』で『世界をより良くする理念への参加』と位置づけます。

モノが生き渡った先進国の消費者は、社会意識も高くなり、グローバル化した世界をより良い場所にしたいという思いを持ち始めていました。

 

この頃になると、先進国の店頭では同じカテゴリー内に多様な商品が溢れて、し烈な価格競争も展開されています。

そのような状況下で、消費者は同じような「機能的な価値」の商品が並んでいたら、評判の悪い背徳的な姿勢の企業よりも、社会的に支持できる姿勢の会社の商品を選択するという図式ですね。

 

「マーケティング3.0」では、これまでの「自社サービスを消費する顧客」ではなく、コトラーの言葉を借りるならば顧客を「全人的な存在」として扱うことを意味しています。

そこで短絡的に「社会問題に対するソリューション」という価値をつけても、目が肥えた消費者にはすぐにバレてしまうような時代です。

 

・・・大量生産・大量消費の「マーケティング1.0」から、たった50年余りで隔世の感すらありますね。

需要と供給の力関係は需要側に大きく移ってしまい、更に高度になった21世紀の消費社会は「マーケティング3.0」でその幕を開けました。

 

人間性心理学「マズローの欲求段階説」との調和

さて、2010年代前後に「マーケティング3.0」が提唱されましたが、次世代の「マーケティング4.0」はどうなるんだろうという疑問が湧いてきます。

気の早い業界関係者の声が聞こえたのか(笑)、コトラーは2015年あたりから「マーケティング4.0」は、「マズローの欲求段階説」に応じて「自己実現化」へ向かうだろうと示唆します。

マズローの欲求段階説

マズローの欲求段階説(※クリックで拡大)

 

ご存知の方も多いと思いますが、「欲求段階説(自己実現理論)」はアメリカの心理学者のマズローが、1943年に人間の欲求を5段階の階層にして提示したもので有名ですね。

・マズローの「欲求段階説」

◆外的に満たされたい「低次の欲求」
①生理的欲求・・・人間が生きていく最低限の欲求(食事や睡眠など)
②安全欲求・・・安心安全に暮らしたいという欲求(経済や健康なども)
③社会的欲求・・・他社に受け入れられ集団に属したい欲求(可能な社会的役割など)

◆内的に満たされたい「高次の欲求」
④尊厳欲求・・・他者や社会から認められ尊敬されたい欲求(他者からの評判や自己評価など)
➄自己実現欲求・・・自分の持つ能力の発揮や成長(「為さねばならない」使命感)

出典:Wikipediaなどからまとめ

マズローは、人間の欲求は①から段階を経て、次第に高次な欲求が現れると提唱しました。

 

「マーケティング4.0」の方向性に関して、コトラーは2016年10月にはネスレ日本社の高岡社長との共著も出版していますが、その本の中でも言及しています。

ネスレ日本が展開する「ネスカフェ アンバサダー」プログラムは、社内の会話を増やしたい、人間関係を良くしたいという顧客の願いを叶える取り組みだ。

(中略)社外にあるカフェに代わるコミュニケーションの場となることで、社内環境を良くしたいとい願いを叶える。

これによって、自己実現が達成されるのである。この点から明らかなように「ネスカフェ アンバサダー」は、マーケティング4.0の好例と言えよう

 

出典:「マーケティングのすゝめ」中公新書ラクレ

事例にも言及されているので、「マーケティング4.0」の姿がおぼろげながら見えてきました

・・・しかし、コトラー自身も、この時点では「マーケティング4.0」の研究中だったようです。

 

「マーケティング4.0」・・・「自己実現欲求」に向けての踊り場?

そして、アメリカで2016年末に待望の「Marketing 4.0」が発売され、日本でも2017年8月に翻訳が発売されました。

 

「コトラーのマーケティング4.0」朝日新聞出版

 

コトラーはこちらの著書で、「マーケティング4.0」を『企業と顧客のオンライン交流とオフライン交流を、一体化させるマーケティング・アプローチである』と定義付けました。

しかし、英文で読んだ方からは、『これまでの「マーケティング1.0~3.0」までの流れや、「3.0以降」に各所で述べていた「マズローの欲求段階説」と重ならない』との指摘も散見されていました。

「マーケティング1.0~4.0」のまとめ

「マーケティング1.0」・・・『製品志向』で『製品販売を目的とする製品管理』
「マーケティング2.0」・・・『顧客志向』で『戦略的に顧客満足を探る/顧客管理』
「マーケティング3.0」・・・『精神充足志向』で『世界をより良くする理念への参加』
「マーケティング4.0」・・・『企業と顧客のオン/オフラインの交流一体化』

私も、「マーケティング従事者の心持ちや戦略」的なところから、いきなり「インターネットやSNS普及時の戦術」的な定義のようになっていたので、当初は「あれれ?」と思いました。

・・・とはいえ、マーケティングの先に「自己実現欲求」を満たす方向に違いは無いが、踊り場としてワンクッション置く必要があったと考えるようになりました。

 

「マーケティング1.0」の時代から、消費者の生活様式をはじめ、企業と顧客のコミュニケーションを媒介するメディアも様変わりしています。

マーケティング4.0(企業と顧客のオン/オフラインのシームレス化)

「マーケティング1.0~3.0」の間にも、伝統的なメディアである「テレビやラジオ」または「店頭」からの一方的なコミュニケーションの時代から、インターネットやSNSの普及で相互方向からのコミュニケーションに変化しています。

また、「モノ不足」だった需要と供給の関係も、現在では「モノ離れ」をするぐらいに顧客との力関係の変化も見られます。

 

・・・待望の本書の「マーケティング4.0」は、一方的なタテの関係だった時代から、力の強まったヨコの関係を整理する段階だったのかなと、私は捉えた次第です。

(「マーケティング4.0」の本書では、そのような時代に対応した、「オムニチャネル」や「カスタマージャーニー」などのトピックも取り上げられていますが、ここでは割愛します。)

 

「マーケティング5.0?」・・・今度こそ「自己実現欲求」に到達か

それでは、「マズローの欲求段階説」は、このままフェードアウトするのか?

と言うと、そうでも無いかと思います。

コトラーの意図としては、おそらく「マーケティング5.0」で「自己実現への達成」を提唱するかも?しれませんね。

 

そこで、前述のコトラーのマーケティング概念と「マズローの欲求段階説」を組み合わせてみました

マーケティング概念 +「マズローの欲求段階説」

+「マズローの欲求段階説」(※クリックで拡大)

「各時代を代表するメディア」と「マーケティング概念」を並べてみると、やはり「マーケティング4.0」は踊り場のような感じがしてきます。

コトラーの今後の研究で、次第に「マーケティング5.0」が明らかになるはずです。時代への対応をコトラーがどのように研究するのかと思うと、大変楽しみですね。

 

・・・精力的な活動を続けるコトラー先生ですが、2018年の誕生日(5月27日)にはもう87歳を迎えられます。

お身体にご自愛くださって、末長いご活躍を願って止みません。

 

「マーケティング6.0??」・・・マズローが晩年に示した「6番目の欲求」

マズローが5段階の階層に及ぶ「欲求段階説」を発表したのは1943年ですが、晩年の1969年には6番目の欲求として「自己超越(Self-transcendence)」が加わっています

マーケティング5.0?(自己実現?)

・・・この辺りになると、「自己超越欲求」を企業のサービスで寄与できるかが全く想像つきません。笑

それに、モノである商品の価値を最大限に膨らますと、「宗教」の領域に近接していくかもしれませんね。

人や理念を立てた結びつき(コミュニティ)のようなイメージが、「マーケティング6.0」でしょうか??

 

「マーケティング4.0」で『企業と顧客のオンライン交流とオフライン交流を、一体化させるマーケティング・アプローチ』が整備されていれば、企業と顧客の結びつきもつなぎ目も無くなっているはずです。

さてさて、マーケティングの未来の姿はどのようになっているでしょうか?楽しみですね!

 

隣雲の硯(りんものすずり/この記事のまとめ)

隣雲の硯(りんものすずり/この記事のまとめ)

マーケティングの概念が消費社会の成熟度に合わせて変容していく様子は、人類の未知なる領域でしょう。

「マーケティング3.0」以降、コトラーがマズローの「欲求段階説」との親和性を指摘しましたが、私は東洋思想の本質とも近付いていると思います。

例えば「論語」で言うところの「君子」像は、マズローの「欲求段階説」の先と結びつきそうです。

 

門弟の子路(しろ)が、孔子に「君子」のことについて尋ねた章句(憲問第十四の四十四 / 14-44)があります。

その中で孔子は「自分を修養してつつしみ深くすることだ」「人を安らかにすることだ」「万民を安らかにすることだ」と、内から外に向かって影響が広がっていく様子を順に答えます。

子路は「そんなことだけでしょうか」と物足りない様子ですが、孔子は「(聖人)の堯や舜でさえ、そのように民を安らかにすることに苦労した」と質問を結びました。

 

・・・このような「君子」の心持ちは、次世代のマーケティングと重なる部分は大きいと思います。

「論語」をはじめとした東洋思想は、今後の現実社会でも色々と役立ちそうですね。

スポンサード リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事

  1. シズル感(sizzle)の意味とは??(ホイヤーの法則)
  2. マーケティングの近視眼?
  3. 「〇〇・マーケティング」を三つに分類する!
  4. 「ドリルの穴」の格言より(セオドア・レビット)

隣雲(りんも)

隣雲(りんも)

こんにちは、隣雲(りんも)です。
私は東洋思想とマーケティングが好きな、アラフォーの日本人です。

声の大きい狡賢い人よりも、徳の高い人こそが報われる世界があったら良いなと思っています。

・・・私の好きな『論語』に「徳は弧ならず、必ず隣有り」という一節がありますが、
このブログはその一節のように、ビジネスパーソンや起業してその後苦労されている方にとって「必ず隣有り」となるべく発信していきます。

そんな私が、なぜ発信しているか等はこちらのリンク先からどうぞ。

「東洋思想」も「マーケティング」も難しく聞こえますが、実は全然難しくないし、組み合わせると大変役立つ英知だと思いますよ。

これらの話を通して、「自分の価値」や「売り方」を再構築する手法などを、楽しくお伝えする所存です。

また楽しからずや!