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こんにちは、隣雲(りんも)です。
私は東洋思想も好きですが、「マーケティング」も同じようなものと考えています。こちらの冒頭にも書きましたが、自分と他者との関わりを深く考える部分など、共通している部分が多いな~と思うからです。
前に東洋思想の中核をなす「論語」についても書きましたが、最近は改めてその共通性を感じています。
それでは、現代の「マーケティング」と言われるものは、一体どのようなものでしょうか?
・・・分かるようで、あまりよく分からない言葉の代表格とも言える、この「マーケティング」についてまとめてみました。
目次(お好きな所からどうぞ)
「マーケティング」とは何か?様々な定義や意味
私は以前、60歳ぐらいで製造業を営む中小企業経営者の方に言われたことがあるのですが、「私は『マーケティング』はよく分からないけど、その言葉を使ってズケズケと人様の会社の粗探しをしてくる輩が嫌いだ。」と。
そして、「そんな輩が使っている言葉だから、『マーケティング』が嫌いになったわ!」と続けて言われていました。
確かに、『マーケティング』という言葉の響きは、ちょっと昔風の表現で「キザ」な感じもしますよね。笑 (現在だと「上から目線」でしょうか)
触れるキッカケ次第で毛嫌いされてしまうのも、『マーケティング』の現在の立ち位置かもしれません。
(これは私の感覚ですが、インターネットをよく利用する世代はこの『マーケティング』という言葉に、そんなに抵抗がないような気もしています)
そして、イメージが多様なのも、この「マーケティング」という言葉の特徴でしょう。
様々な人に「マーケティングとは何でしょうか?」と聞いたら、
「市場調査のことです!」
「TVコマーシャルやプロモーションです!」
「ブランド価値の創造です!」・・・等と多種多様なイメージが回答されるでしょう。
別にこれらの回答は間違いという訳でも無いので、混乱に拍車をかけるところではあります。笑
それならばと、先ずは『マーケティング』の定義を色々と調べてみました。
一般的な「マーケティング」の定義(辞書)
たまに、辞書を引くと余計に分からなくなる場合がありますが、この「マーケティング」は最たるものかと思います。笑
・「マーケティング」の一般的な解釈(辞書)
『顧客ニーズを的確につかんで製品計画を立て、最も有利な販売経路を選ぶとともに、販売促進努力により、需要の増加と新たな市場開発を図る企業の諸活動。』
出典:デジタル大辞泉
十五回ぐらい繰り返して読むと、何となく伝わってくるものが感じられる・・・かもしれません。笑
これでわかる人は、企業でのベテラン実務経験者さんや、大学でマーケティングを専攻している学生さんでしょうか。
以前に、こちらの記事で辞書の定義を意訳してみましたが、少しだけ分かりやすくなりました。該当箇所に下記の画像に赤線を引いています。
辞書の定義を意訳すると、何だかビジネス書っぽくなりましたね。
この意訳(企業の諸活動である「マーケティング」は、次の四つの要素で構成される。顧客ニーズ、製品計画、販売経路、販売推進である。)では、
川上から川下まで結構な長さがありますが、この要素の一つ一つも「マーケティング」と呼ばれたりします。

それぞれ「マーケティング」と呼ばれるのでややこしい
また、その人の立ち位置によって、マーケティングの定義も変わることが、この言葉をややこしくしている感は否めません。
・・・それでは、各界を代表する人物や様々な協会の「マーケティング定義」を見ていきましょう。
「マーケティング」を体系化・・・フィリップ・コトラーの定義
コトラーは「現代マーケティングの父」や「マーケティングの泰斗」と称される人物で、86歳になった2017年でも来日して講演するなど、未だ精力的な活動をされています。(好奇心が旺盛な方で、根っからのマーケティング好きだそうです。笑)

P.コトラー(出典:公式サイト)
コトラーは1967年に『マーケティング・マネジメント』を出版しましたが、現在までに40年以上に渡って12の版を重ねて更新し続けています。それまでのマーケティングの教科書は市場の構造を示したものだっただけに、初めて系統立てて科学的に「近代マーケティング」を編集した功績が称えられています。
そのコトラーは、「マーケテイング」をこのように定義つけています。
・フィリップ・コトラーの「マーケティング」定義
『マーケティングとは社会活動のプロセスである。
その中で個人やグループは、価値ある製品やサービスを作り出し、提供し、他社と自由に交換することによって、必要なものや欲するものを手に入れる』出典:『マーケティングのきほん』翔泳社
先ほどの辞書の定義では「会社組織」が前提にありましたが、コトラー教授は冒頭に「社会活動」と「個人やグループ」として、マーケティングがより広義になっていることが分かりますね。
「経営の神様」・・・ピーター・ドラッカーの定義
経営(マネジメント)を体系化、学問分野として確立した功績を持つのが、ピーター・ドラッカーです。

P.F.ドラッカー(出典:公式サイト)
その功績から「現代経営学の父」と称され、95歳で亡くなるまで常に経営学のトップに君臨し、世界中の経営者から尊敬を集めました。日本のビジネスパーソンの間でも人気の高い方で、ドラッカーの本はよく読まれています。
そして、前述のコトラーは「自分がマーケティングの父なら、祖父はドラッカーだ」とも評しています。
下記は、そのドラッカーの「マーケティング」の定義となります。
ピーター・ドラッカーの「マーケティング」定義
『マーケティングの目的はセリング(単純販売活動)を必要なくすることである』
出典:『マーケティングのきほん』翔泳社
これまでの辞書やコトラーの定義と趣が変わりますが、本質的な事を述べているシンプルな定義で、私が一番好きな定義でもあります。
・・・「セリング」から派生した「マーケティング」という概念は、よく前後関係をごちゃまぜにして語られることがよくあります。
例えば、「(わずらわしい)マーケティングなんかいらないから、売り上げを増やしたいんだよ!」といった考え方ですね。
ドラッカーの前後関係からすると「先ずはマーケティングありき」で、その効果が及べば「セリング(単純販売活動)」は無くならないにしても、かなり楽になることが示唆されます。
AMA(アメリカマーケティング協会)の定義
本場アメリカマーケティング協会(AMA)のマーケティング定義そのものは、古くは1937年に制定されましたが、これまでに都合4回の更新をしています(1940年 / 1960年 / 1985年 / 2004年 / 2007年)。
・・・この更新は、AMAがアメリカの消費社会の変容を受けていることを表しています。買い手が変容したら、売り手側も柔軟に変わっていかなければなりません。
・AMA(アメリカマーケティング協会)の「マーケティング」定義
『マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである(2007年)』
出典:Wikipedia
この更新で付け加えられた新たな特徴的な言葉は、「パートナー、社会全体」となります。日本でも近江商人の家訓が後年に「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」と誰かがまとめましたが、現代マーケティングでも同様です。販売活動だけにとどまらない概念が加えられています。
JMA(日本マーケティング協会)の定義
日本マーケティング協会の設立は、戦勝国のアメリカより20年遅れた1957年となります。
マーケティングの定義自体は何度か更新されていると思いますが、JMAさんのウェブサイトには1990年定義の最新(?)のものだけがあります。
・JMA(日本マーケティング協会)の「マーケティング」定義
『マーケティングとは、企業および他の組織(1)がグローバルな視野(2)に立ち、顧客(3)との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動(4)である。』
(1)教育・医療・行政などの機関、団体などを含む。
(2)国内外の社会、文化、自然環境の重視。
(3)一般消費者、取引先、関係する機関・個人、および地域住民を含む。
(4)組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動をいう。出典:日本マーケティング協会
JMAさんの会員会社の顔ぶれ(多くの大企業が名を連ねている)からも、「グローバルな視野」など大きな概念であることが伝わりますね。インターネットの普及など、日本の消費社会も変容しているはずですが、こちらは未だ1990年の定義のままとなります。
最前線の視点・・・JPM(日本プロモーショナル・マーケティング協会)の定義
先ほどの辞書の定義で、「顧客ニーズ、製品計画、販売経路、販売推進」と四つの要素がありました。その中で「セリングの最前線」まで迫ったマーケティング領域が、「販売促進」や「プロモーション」となります。
「販促・プロモーション領域のマーケティング定義」は、また少し視点が変わってきます。
・JPM(日本プロモーショナル・マーケティング協会)の定義
『ブランドの顧客開拓と維持のために、
特定化された市場での、消費者、小売業者あるいは卸売業者に向けた、
直接的購買動機づけを中心にするマーケティング活動である』出典:日本プロモーショナル・マーケティング協会
こちらの定義は、マーケティングの一部分である「販促・プロモーション」を総じて「プロモーショナル・マーケティング」と昇華していますので、これまでの定義と随分と違いますね。
このように幅広いマーケティング領域の立ち位置によって、マーケティングの視点も意義も変化していくことが、お伝えしてきました。
その他・・・実務的なマーケティング定義(その1~2)
マーケティング界隈の大人物や協会などの定義は、抽象的なものが多いと感じられたと思います。
こちらでは、実務に携わる多くの人が使っている「より具体的な定義」もご紹介しましょう。
・実務的な「マーケティング」定義(その1)
『売れる仕組みを創ること』
出典:日本の実務家のみなさん
この「売れる仕組み」と定義する実務家の方は、結構多いかと思います。
・・・先ほどのドラッカーの定義(「マーケティングの目的はセリングを必要なくすること」)に近く、よりシンプルでわかりやすいですよね。
冒頭の中小企業の社長じゃないですが、「マーケティング」という言葉がふわふわして掴みどころが無いので、このように分かりやすく伝えないと相手が混乱してしまいますね。
よく聞く定義ですが、大変分かりやすいと思います。
あと、他に聞いて面白いな~と思った定義は、
・実務的な「マーケティング」定義(その2)
『目的地を明確にした、地図を作る』
出典:とある起業家の方
というのもあります。
この詳細な「地図」があると道に迷わなくなるし、後々のモデリングも容易になります。つまり「再現性」が高くなるということですね。
コンサルや指導をされる方は、参考にしてみてください。
おまけ・・・私(隣雲)のマーケティング定義
以前にこちらでも書きましたが、私自身もマーケティングを平たく言った定義を持っています。
・私(隣雲)のマーケティング定義
『「売り(セリング)」の前の段階で、「売り方(マーケティング)」を整備すること』
ドラッカーや実務的なマーケティング定義もそうですが、セリングとマーケティングで前後関係を明らかにするべきだと思います。
この関係を別で例えると、シャンプーとコンディショナーの関係が同じですね。
シャンプーで髪の汚れを落とさないで、いきないコンディショナーを頭につける人はいないと思います。しかし、残念ながらマーケティングをしないうちから、焦ってセリングに走る行為はビジネス上でよく散見されることです。
たまに「マーケティングとセリング」の関係を「きのこの山とたけのこの里」のように、どちらも並列で捉える方がいます。
この後者は、ただの「単なる時間軸の無い対立関係」です。(インターネットで対立を煽って盛り上げる構図ですね)
「きのこの山とたけのこの里」のどちらが先でも、大勢に影響しません。笑
それを説明するために、私はこの定義(シャンプーとコンディショナーまで)で説明するようになりました。
・・・様々な定義がありますが、どれかが間違いとかではありません。立ち位置によって変容していくのもまた面白いので取り上げてみました。
隣雲の硯(りんものすずり/この記事のまとめ)
「マーケティング」という定義は様々で、本当に幅が広いですね。前述の中小企業の社長さんが、混乱するのもよく分かります。笑
辞書のマーケティング定義を意訳した
『企業の諸活動である「マーケティング」は、次の四つの要素で構成される。顧客ニーズ、製品計画、販売経路、販売推進である』
の中で、最も川上である「顧客ニーズ」の部分へのアプローチは時代と共に変容していきます。
日本でも戦後の復興から経済成長期あたりまでは、圧倒的な「モノ不足」時代でした。
当時の顧客ニーズだったら「何が欲しいですか?」と聞いたら分かりそうですが、現在は「モノ余り」から「モノ離れ」にまで消費社会が成熟してします。
現在は聞いた回答がそのまま正解にならないような、心の内を掴むのが難しい時代とも言えます。
・・・しかし、人間関係の関わりなら東洋思想に一日の長があります。「論語」に記されているような孔子の心持ちなどは、現代マーケティングにも十分に通用するものと思います。
例えば、孔子のこのようなことばがあります。
『子の曰わく、君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」里仁第四の十六 / 4-16
◆先生はいわれた、「君子は正義に明るく、小人は利益に明るい。」
出典:『論語 金谷治訳注』岩波文庫
短絡的に自社の売上を考えるような企業のマーケティング施策は、現在の生活者はもう薄々と感じ取っています。モノだけでなく情報も溢れている現代社会だと、「売り手」のマインドセットも大事になってくるはずです。
とはいえ、営利企業が存続するためにどこかで利益を上げなければいけません。
そのため、私が定義する「前段階のシャンプー(マーケティング施策)」は、より重要になるのかなと思います。
この記事の最後にご紹介するのは、これも孔子の有名なことばですね。
『仲弓、仁を問う。子の曰わく、(中略)
己の欲せざる所は人に施すこと勿(なか)れ。』顔淵第十二の二 / 12-2◆仲弓が仁のことをおたずねした。先生はいわれた、(中略)
自分の望まないことは人にしむけないようにする。」出典:『論語 金谷治訳注』岩波文庫
「己の欲せざる所は人に施すこと勿(なか)れ」は人間関係を構築するうえで、基本的なところになりますね。
無計画でいて売上が足りないからと、乱暴なビジネスに走るのは避けたいものです。
相手(顧客)を見ないで自分だけ利益を得るようなマインドでは、後ろ指を指されて長くはビジネスできないでしょう。
私はそのような「売り方」は全く推奨できませんので、このような意見に耳の痛い方が幻聴に苦しむようなブログを目指したいと思います!
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