ニーズ・ウォンツ・シーズの違いとは?「ドリルの穴」の格言でまるっと理解!

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「ドリルの穴」の格言より(セオドア・レビット)
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こんにちは、隣雲(りんも)です。

実務で何かしらのマーケティングに携わっていなくても、「ニーズ」という言葉はよく耳にするかもしれませんね。

 

ところが、その他にも「ウォンツ」や「シーズ」と似たような言葉もあったりして、なかなか混乱します。笑

この辺りは、有名な「ドリルの穴」の格言を用いると腹落ちするかなと思います。

 

T.レビットの著書から定着した、「ドリルの穴」の格言

前回の記事で、「マーケティング・マイオピア(近視眼)」を取り上げました。

この「ドリルの穴」の格言も同じく、セオドア・レビットの著作から広く定着したものとなります。

T.レビット(画像出典:Wikipedia)

このレビットの著作である「マーケティング発想法(The Marketing Mode)」は、1969年に出版され、ビジネス書において珍しいベストセラーに。

各国で翻訳されますが、日本では1971年に翻訳されています。(現在は絶版ですが中古で入手が可能

 

「ドリルの穴」の格言が登場するのは、著書の第一章(製品コンセプトをどうつかむか)の冒頭部分です。

◆「ドリルの穴」の元ネタ

「昨年、四分の一インチ・ドリルが一〇〇万個売れたが、これは、人々が四分の一インチ・ドリルを欲したからではなくて、

四分の一インチの穴を欲したからである

人は製品を買うのではない。製品のもたらす恩恵の期待を買うのである。」

T.レビットの著書から定着した、「ドリルの穴」の格言

出典:「マーケティング発想法」ダイヤモンド社

 

この言葉自体はレビットのものではなく、正体の分かっていない「レオ・マックギブナ(Leo McGivena)氏の発言」が正確なところです。

 

・・・この言葉が転じて、「ドリルを買う人が欲しいのは、『穴』である」「ドリルを買うなら、『穴』を売れ!」といった格言になって広く知られるようになりました。

 

レビットの「マーケティング発想法」が上梓されて約50年が経とうとしていますが、普遍的な示唆に溢れていますね!

このような問題は未だに散見されることからも、レビットの慧眼には驚くばかりです。

 

例えば、現在でも「ニーズ」や「ウォンツ」を混同してしまうケースがありますが、これは「ドリルの穴」の格言そのままの図式だったりします。汗

 

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「ニーズ」「ウォンツ」「シーズ」・・・意味や違いなど

「ニーズ」「ウォンツ」「シーズ」・・・意味や違いなど

カタカナで並べると、初めは意味が伝わり難いのが、マーケティング界隈の悩ましいところです。笑

・・・その背景などを知ると理解が進むので、今回は「ドリルの穴」の格言に準じて説明を加えていきますね。

 

「ニーズ」の意味とは

「ニーズ」「ウォンツ」「シーズ」の三つの中で、使用頻度が最も高いのがこの「ニーズ」だと思います。

例えば『消費者のニーズに応える』といった、フレーズですね。

 

前の二つは、ノースウェスタン大学のフィリップ・コトラーが言及したので、現在ではほぼマーケティング用語として定着しました。

それでは、先ず「ニーズ」の意味を、Wikipediaや本から引用します。

◆「ニーズ」の意味

・人間生活上、必要なある充足感が奪われている状態のこと

出典:Wikipedia

・顧客が欠乏していると感じるもの

出典:「はじめてのマーケティング」有斐閣

『ドリルの穴』の格言では、「四分の一インチの穴」のこと

 

先ほどの『ドリルの穴』の格言になぞらえると、「四分の一インチの穴を欲し」ている状態にあたりますね。

・・・別の例で言うならば、単純に「お腹が減った」という状態が、「ニーズ」です。笑

 

「顕在的なニーズ」と「潜在的なニーズ」の違い

この「ニーズ」は、二つに分類されることが知られています。

それが「①顕在(けんざい)的なニーズ」と「②潜在(せんざい)的なニーズ」です。

 

既に前述したものが、①の顕在的なニーズで、自らが欲していると分かっているものですね。

 

これに対して、②の潜在的なニーズは、自分が気が付いていない状態を指します。

・・・人間の意識は、潜在意識が9割程度と言われますが、よく氷山に例えられることがあります。

潜在意識と顕在意識(ニーズやOATHの法則)

海面から出ている部分が①の顕在ニーズで、目に見えている部分は、全体から見ればほんの一部分です。

しかし、②の潜在ニーズは、海面下に隠れていますが、実際は思いがけない大きなものだった・・・ということになります。

 

この意識分類については他に、「OATH(オース)の法則」も知られています。

◆意識分類の「OATHの法則」

Oblivious(無知)→②の潜在的なニーズ
Apathetic(無関心)≒まだまだ客 →以下、①の顕在的なニーズ
Thinking(考えている)≒そのうち客
Hurting(苦痛)≒今すぐ客

「OATHの法則」は四段階の頭文字を抜き取ったもので、顧客の「問題意識レベル」の分類として発展しました。

 

「ドリルの穴」の例で言えば、趣味の日曜大工の場合には「Thinking(考えている)」の段階です。

例えば、脚を骨折して階段に手すりをつけないと、一人で上り下りできない状況!に直面していたら、「Hurting(苦痛)」の段階となります。

 

・・・もう、今すぐ何とかしないと!、という苦しい問題認識下にありますね。

 

「ウォンツ」の意味とは

先ほどの脚を骨折した人は「OATHの法則」の「Hurting(苦痛)」の段階で、何とか自分で手すりをつけようと、ホームセンターに向かったと仮定します。

このケースで、店員さんが延々とする「最新ハイスペック・ドリル」の説明は必要でしょうか?

・・・必要ないですよね。笑

 

脚を骨折した人は、「階段に手すりをつけるドリルの穴」を欲していたはずです。

そのために、ホームセンターに足を運んで、取り付け作業に最低限必要なドリルを求めていただけなのです。

 

この例のように、問題意識(ニーズ / OATHの法則)~ 情報探索 ~ 選択肢を検討した段階が、「ウォンツ」になります。

◆「ウォンツ」の意味

・これ(前述のニーズ)を満たす(特定の)モノ

出典:Wikipedia

・ニーズを満たす特定のもの

出典:「はじめてのマーケティング」有斐閣

・『ドリルの穴』の格言では、「四分の一インチ・ドリル」のこと

この「ウォンツ」の結果として、ホームセンターは「ドリルが購入されたという購買実績」が残ります。

 

・・・また、お金に糸目をつけられないほど急な場合には、施工業者に工事を依頼するという選択肢もありますよね。

このように、現在の「ニーズ」と「ウォンツ」の関係は、「1対多数」であることがほとんどです。

 

それだけ、多数の競合会社がいるので、供給側は特に「潜在ニーズ」を様々な調査手法で見つけようと躍起になっています

 

「シーズ」の意味とは

この「シーズ」を直訳すると「種」ですが、最近はビジネス用語としてあまり聞かなくなった気がしています。(気のせいかな?)

シーズのイメージ(ニーズ、ウォンツ

ビジネス用語的には、おおまか「自社の資源(技術など)」として使われていると思います。

 

辞書の一般的な解釈は、こちらです。

◆「シーズ」の意味

企業が新たに開発することによって、消費者に提供されるようになる技術・材料・サービス

出典:コトバンク(大辞林)

顧客の求めるニーズ(needs)に対して、企業が新しく開発、提供する特別の技術や材料のこと。新製品の開発では、ニーズとシーズのバランスが重要となる。

出典:コトバンク(デジタル大辞泉)

・『ドリルの穴』の格言には無いが、「四分の一インチ・ドリル」を作れる技術やノウハウのこと

 

・・・実は最初の二つは同じようなことの記述に見えますが、大きな違いが隠れています。

一読していただいて、分かりましたか?

 

 

・・・答えは、前者が「製品志向(プロダクトアウト)」で、後者が「顧客志向(マーケットイン)」の起点で説明されています。

(もちろん、私も最初は気が付きませんでした。笑)

 

この「製品志向(プロダクトアウト)」について、少し説明を加えます。

戦後しばらくの日本がそうであったように、企業は技術から生まれた新製品を重視する傾向があります

しかし、経済が発展して生活が豊かになる人が多くなると、需要と供給のバランスは完全に反転してしまいました。

 

そして、行き詰まった「製品志向(プロダクトアウト)」の企業は、販売攻勢をかけるんですよね。笑

顧客のニーズを軽視して、売上や受注件数といった短期的な成果を重視するという悪循環となります。

マーケティング1.0(製品志向)

これに対して、後者の「顧客志向(マーケットイン)」は、先ずは「顧客の欲しているニーズやウォンツ」が起点です。

市場の商品の数は増える&生活が豊かになった需要側の消費体験が高まると、ますます「製品志向(プロダクトアウト)」は上滑りする傾向にあります。

 

 

・・・ちょっと「ドリルの穴」の格言に戻りましょう。

例えば、男性向けのドリルは見飽きたので、女性向けはどうでしょうか?

ワインのコルクや固いふたを開けるアタッチメントの付いた、小さくてトルクのあるハイデザインのドリル・・・とかとか。笑

 

 

このように、「シーズ」は「ニーズ」と対で用いられるように、現在では「顧客に向き合う」のが大前提です。

・・・そうしているうちに、豊かになった生活者からは、さらに次々と高次な欲求が顕在化されてきます。

 

その高次な欲求を、前述のコトラーが「社会志向」などと分析して、マーケティング側は対応を求められているのが現状です。

(コトラーの「マーケティング1.0~4.0」の詳細は、こちらの記事で紹介しています。)

 

隣雲の硯(りんものすずり/この記事のまとめ)

隣雲の硯(りんものすずり/この記事のまとめ)

似たような言葉で「ニーズ」「ウォンツ」「シーズ」と並びましたが、自分の心持ち次第で序列は決まってきます

もし心持ちが「顧客志向(マーケットイン)」であれば、自ずと「ニーズ」から掘り下げていくでしょう。

 

その「ニーズ」についてのリサーチ方法は、SNSの傾聴はもちろん、文化人類学や社会学で用いられる「エスノグラフィー」を応用した行動観察も行われています。

今後も、また新たな調査手法が生み出されていくでしょう。

 

また、人物の洞察については、他ジャンルの「東洋思想」をひも解いても良いでしょう。

こちらも、根源的な言及がされていますよ。

 

・・・お馴染みの「論語」の言及は、こちらですね。

『子の曰わく、其の以(な)す所を視(み)、其の由(よ)る所を観(み)、其の安んずる所を察すれば、
人焉(いずく)んぞ廋(かく)さんや、人焉んぞ廋さんや』
為政第二の十 / 2-10

◆先生がいわれた、「その人のふるまいを見、その人の経歴を観察し、その人の落ちつきどころを調べたなら
(その人がらは)どんな人でも隠せない。どんな人でも隠せない。

出典:『論語 金谷治訳注』岩波文庫

 

売りたいがため」にドリルを押し売りする前に、相手に歩み寄る心持ちが欲しいですよね。

・・・ついつい短絡的に結果を求めるのはよく分かるので、バランスが難しいところではあります。笑

 

この「歩み寄る心持ち」こそが、顧客が何を欲しているかを知る最短距離ではないでしょうか?

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隣雲(りんも)

隣雲(りんも)

こんにちは、隣雲(りんも)です。
私は東洋思想とマーケティングが好きな、アラフォーの日本人です。

声の大きい狡賢い人よりも、徳の高い人こそが報われる世界があったら良いなと思っています。

・・・私の好きな『論語』に「徳は弧ならず、必ず隣有り」という一節がありますが、
このブログはその一節のように、ビジネスパーソンや起業してその後苦労されている方にとって「必ず隣有り」となるべく発信していきます。

そんな私が、なぜ発信しているか等はこちらのリンク先からどうぞ。

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